Select a primary language to get the most out of our Journal pages:
English 日本語 Español Português

We have made a lot of improvements to our Journal section pages. Please send your feedback to editor@DiscoverNikkei.org!

The Nikkei of Latin America and Latino Nikkei

日本の日系人&南米の日系人—若者たちや新しい世代の団体運営の挑戦—

南米諸国を訪れるといつも様々な日系団体のお世話になり、運営に関わっている役員と意見交換をする。経済成長で潤っている国では、日系社会もかなり景気が良いように映る。他方、この日本でも定住南米日系人たちは、いくつとなく全国レベルの団体を設立してきたが、ほとんどが日本の社会から認知される前に、消滅している。設立の際、領事館で約款まで認証してもらい、大使や総領事と記念写真を撮っても数ヶ月後にはほとんど機能していないことが多い。「連合会(Federación)」とか「全国協会(Asociación nacional)」とかいう名義だが、名ばかりの団体で何も代表していないのである1

一方、文化や芸術の交流を目的としたグループや団体は比較的活発に活動を続けているが、どれだけ地元の日本人の協力を得られるかがその継続を左右する。目的がはっきりしている活動は継続するケースも多く、最近は組織化する団体もでてきた。ペルーの民謡マリネーラ踊りの普及を目指すグループがその一つである2。各地に教室があり、発表会や本格的なコンクールを開催しており、優勝者はペルーの大会にも出場できる。最近は、日系世帯の子弟も参加するようになってきており、文化的アイデンティティーの再発見にも貢献している。各地の国際祭りなどのイベントにも積極的に参加し、セミプロ並みの活動をしている団体も存在する。

一部の外国人コミュニティーは、ナショナルデーなどのイベントに本国から大物アーティストを招聘して大掛かりな企画を実施することもあるが、金銭トラブルや調整の不備が指摘されている。ベトナム人、フィリピン人、ブラジル人、ペルー人コミュニティー内で行われているイベントも、毎回開催団体が異なるものもあり、継続性という観点からは外れている。都内の一等地にある代々木公園や日比谷公園などは自治体が運営しているため、手頃な料金で利用でき、交通の便がよいため人が集まりやすい。その分、かなり早い段階から予約しなければならず、ときには、抽選になったりする。組織が団結していなければこうした場所取り合戦には勝てない。また、スポンサー確保や大使館の共催にも影響する。

多くの団体は任意の組織で、法人格がない。NPO法人(特定非営利活動法人)の資格を得たグループもあるが、年に一度は規定の事業報告や会計報告を提出しなければならず、その運営の事務や会計処理にはかなり日本語ができるスタッフが事実上不可欠である。法人格があり、地元社会との協力関係がしっかりしていれば、行政からの様々な助成金の対象になり活動を拡大できる可能性が高まる。しかし、こうした公的補助は永遠に提供されるものではなく、事業ごとに期限もあるし、ときには入札もある。

せっかく法人格を取得しても、外国人だけで運営しているNPO法人はあまり長続きしないし、ほとんどの場合アーティストや講師の未払い問題が発生している。むしろ、任意団体として継続している組織やグループの地道な活動の方が評価されることが多い。自治体や国際交流協会と協力したり、外国人の社会統合をサポートすることによって存在感を増すことができる3

実際、行政や地域社会の支援がかなり充実しているので、外国人コミュニティーひとつ一つを代表するような全国レベルの団体は必要ないのかも知れない。これまでそうしたイニシアチブはほとんど途中で頓挫してしまったが、かといってそれが外国人の社会統合に大きな不都合を与えたという結果にはなっていない。むしろ様々な団体や活動グループが地域社会で何らかの貢献をしていることで十分なのかも知れない。

パラグアイの日本人会連合会本部、主都アスンシオン。一世と二世の協力によって運営されている団体である。今年は、移住80周年を記念するが、ほとんどの移住地は戦後移住である。

他方、南米諸国でも日系団体は変化しており世代交代だけではなく、大きな組織に対する運営参加には意識の違いも見られる。当然、国や地域によっても異なるし、日本人移住者の時期やその後の日系社会の仕組みにもよる。パラグアイやボリビア等の戦後移住の農業移住地(コロニア)の日系社会及びそこに存在する日本人会や日本語学校、農協などの実態と、歴史が古く都市部に集住しているペルーやブラジルの日系団体の実態は、かなり異なっている。後者の場合、指導者たちの世代が三世から四世に移ってきており、現地社会に完全に統合している日系人たちが中心になっている。前者は、ようやく二世への世代交代が行われたばかりで、まだ日本とのつながりや日本に対する思いが非常に強い。

これらの国々を訪問した筆者は、日系人たちの優先課題や今後の活動について類似している部分もあるが、企画や実施方法が異なることに気づいた。ペルーの場合、大きな日系組織が中心にあり、地方組織とも統制がとれている。そのため、リーダーたちも意見の違いがあってもお互いに妥協しあって協調する。アルゼンチンの場合は、そうした調整機能をもった団体はなく、各位がそれぞれ自分の地域で様々な事業を展開している。ブラジルは国土が余りにも広いので、文協という組織がありながらも各地の団体の独自性が強い。

いずれにしても、盆踊りやバザー、日本祭りでは独立採算制を重視しており、団体に負担をかけない分、会員や参加者もかなり自由である。最近は、どのイベントでもどれだけ非日系人の参加者を引きつけるかが財源確保の鍵となっている。そして、それらのイベントで得た資金で施設や日本語学校等の維持費を補っている。一世が築いた建物やグランドなどの維持費の負担は、コミュニティ内の課題の一つである。

今の世代の日系人は目的別に行動するため、基本的に毎回会費を支払って一つの団体に所属したり、寄付をすることで団体をサポートするのではなく(以前は、日系人は地元の日本人会に所属し、そこを拠点に様々な活動を展開してきた)、感心のあるアイデアには協力し、労力を提供する。また、小規模ビジネスで自分たちの活動資金を集める。しがらみを嫌う分、柔軟に様々な活動に参加し、横のフラットなつながりを大切にする。組織をつくらずに、フェイスブックのようなソーシャルメディアを通して、自分たちのグループとその活動をアピールし、存在感を高める。また、起業に感心があるものは先輩や有力者が開催する勉強会にも参加し、新たなアイディアや取り組みを積極的に導入する。

一つの例だが、アルゼンチンのブエノスアイレスでは、以前では考えられない事業に複数の日系人が参加している。それは、中国人をメインに韓国人と日系人が参加する商業モールへの出店である。郊外のティグレというリゾート地に、チャイナタウンという新しいモールを整備し、その中にNippon Doori(日本通り)をつくり十数店舗が2015年末から商売を営んでいる。とても集客力の多い場所で、毎週末何十万人が訪れる観光名所である4。こうした事業は、日系人だけでは困難であるが、今回中国系アルゼンチン人の呼びかけで可能になったのである。

ティグレ市のチャイナタウンモール。この施設の中にNippon Dooriがあり、アルゼンチンの日系実業家が新しいチャレンジをしている。

出店しているのは小規模の日系飲食店や日本食材店等を扱っている業者で、その多くはこれまで様々な日系社会のイベントで積み重ねた経験をいかし、効率よくそれも非日系人の好みにあった方法でサービスや商品を提供している。以前は、日本人会の中に殺風景な店と和食レストランを開業するだけだったが、今はこうした試みにも参加しアグレッシブにビジネスを展開している。

地元社会との関係が成熟してくると、日系社会も挑戦しなくてはならない場面が増えてくる。どの日系団体も日系人でない人をどれだけ集客できるかに力を注いでいる。また、どのような事業も質の向上とアカウンタビリティー(説明責任と会計の透明度)が求められており、セミプロからプロへのステップが欠かせない。単なる内側の祭りではなく、経費と対価を設定して一定の利益を得ることできちんとしたサービスや商品開発も重要になってくる。今、多くの南米諸国の日系社会ではこうしたチャレンジに直面している。寂れた組織と施設の再生に取りかかっている日系人もいるが、そのためにはやはりこれまでの反省点から何かを学び、今後どのような事業を明確なビジョンと予算編成によって計画する責任がある。もう丼勘定の時代ではない。地元社会の有力者や日本の協力を得たいのであれば、やはり今後の団体運営には透明度は絶対に欠かせない条件である。

日本の南米日系人もペースを早める必要があり、特に飲食店等を経営している者は一段とサービスのレベルアップをしなければ生き残れないかも知れない。またスポンサー的な役割を果たしている店や企業が地位を向上しなくては、当然ながら様々なコミュニティー団体も成長できないのが実情である。

注釈:

1. 5年前に書いたコラムだが、今でもその状況は変わっていないので引用する。
在日日系ラティーノの同胞団体とその課題とは」アルベルト・松本 (2010.08.17) 

2. いくつかあるのだが、Academia de Marinera “Somos Perú” en Japónがかなり知られている。また、Club Libertad Trujillo Filial Tokioもとても有名である。

3. 神戸のラテンのコミュニティーがその一つである。ひょうごラテンコミュニティの代表が、「Latin-a」という月刊誌をだしているし、地域社会に対しても多大な貢献をしている。(Facebook: Revista Latin-a) 

4. Facebook: Nippon Doori    
Facebook: ChinaTown Tigre- Página Oficial 
ティグレは、ブエノスアイレス郊外にある最大の観光名所で、パラナ川のデルタ地区にある。

 

© 2016 Alberto J. Matsumoto

association community nikkei

About this series

Lic. Alberto Matsumoto examines the many different aspects of the Nikkei in Japan, from migration politics regarding the labor market for immigrants to acculturation with Japanese language and customs by way of primary and higher education.  He analyzes the internal experiences of Latino Nikkei in their country of origin, including their identity and personal, cultural, and social coexistence in the changing context of globalization.