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The Nikkei of Latin America and Latino Nikkei

日本で就職する外国人留学生の増加と日系企業の課題

2014年現在の来日留学生の数は10年前より80%も増加している。当時も、アジア諸国出身が9割以上を占めていたが、この時期中国からの留学生が急激に伸びた1

2014年の統計では、日本語教育機関に在籍している外国人留学生は44,970名(中国、ベトナム、ネパール国籍だけで8割を占める)で、大学や大学院に在籍しているのが139,185名(中国、韓国、ベトナム、ネパール国籍で同じく約8割弱にある)で、両者を合計すると184,155人になる2。日本の入国管理局は、卒業後の在留資格(ビザ)変更に一定の猶予期間(つなぎのビザ)を与えるようになったので、留学生はそのまま日本に残って就職活動をし長期滞在計画を立てることができるようになった3。企業や就職支援会社も外国人留学生の雇用にかなり積極的に取り組んでおり、大学もそれにタイアップして情報提供している4

教育機関別の留学生数の推移 
(平成26年度 外国人留学生在籍状況調査結果、4頁、JASSO日本学生支援機構)

南米からの留学生は全体の1%にも満たないが、その多くは国費留学(日本の文科省等)生として名門の大学院に在籍している。日系人でなくとも日本語能力は高く、日本での就職希望者も少なくない。そうした経験を後輩や在日同胞に伝える機会も増え、近年は留学生同士の横のつながりも拡大している5

留学生による在日子弟への教育セミナー  

昨年11月には、APEJA日本ペルー人留学生及び卒業生協会が、都内で「日本での就職セミナー」を企画した。在東京ペルー総領事や大学関係者、留学生支援企業が参加し、筆者もパネリストの一人として今の労働市場や企業が求めている人材について講演した6。日本財団の日系留学生グループも時々在日南米日系人子弟に同じようなセミナーを行っている。

最近の傾向として、大手製造業では主に理科系の大卒及び大学院卒を優先して雇用している。商社やサービス業では営業職の人材を求めており、語学力、バイタリティー(ハングリー精神)、文化的多様性、日本での経験、本国の文化的特徴やビジネス慣習、人脈等が評価の対象となっている。現在、大手企業だけではなく中小も海外展開を目指しており(少子・高齢化に伴う国内市場の縮小が主な原因)、一般の大卒ではとても太刀打ちできない状況である。もちろん、留学生だからといって企業が要求する諸条件を満たしているとは限らず、適切な人材確保はそう容易なことではない。企業も大学も「グローバル人材」と叫ぶが、多くは表面的なことしか理解しておらず、既に存在する国内人材さえまともに活用していないのが現状である。

日本人大学生は今売り手市場であるが、面倒でリスクの高い海外勤務をあまり好まない傾向にあるので、企業は外国人留学生に注目している。しかし、留学生にも様々な思惑や希望があり、日本の企業は、求めている人材を簡単にタイミングよく確保できるとは限らない。企業の採用意欲に関してはいくつかの調査があるが7、企業が求めている諸条件として、語学力や専門性、現地(進出先)での人脈と調整能力があげられる。しかし、そうした人材をどのように活用し、評価(配属や昇進)するのかという基準はまったく明らかになっていない。その結果、優秀な人材はそうした基準が明確にされている外資系企業や、もっと魅力的な国で就職を試みるのである(先進国とは限らず、新興国か場合によってはスリルのある途上国のこともある)。

外国人留学生を採用する目的と資質 (ディスコ、2013年9月)    

厚生労働省は、企業向けの「高度外国人材活用のための実践マニュアル」を作成しているが8、基本的には企業側の都合ばかりが強調されており、「グローバル人材」をどのように評価かするのか、ビジョンがまったく見えないのが日系企業のマイナス点かもしれない。留学生たちも、日本での就職に関心が高いものの中長期的な人生設計には至らないことが多い。多くが、数年間経験を積んだ上で、そのノウハウを本国か第三国で活用することを選択してしまう。

外国人労働者数と留学生の就職状況
(The Page, 2014.11.13)  

日本での留学生の就職状況に関しては、法務省入国管理局が毎年発表している報告書がある。平成25年の統計によると9、12,793の在留資格変更件数のうち91%が許可された(68,4%が人文知識・国際業務というビザで、20.8%が技術系である)。許可された11,647人のうちアジア諸国の出身者が95%を占めており、65.6%が中国、10.5%が韓国、3.6%がベトナム、3.1%が台湾、そして2.5%がネパールである。近年、在学数が飛躍的に伸びているベトナム人とネパール人留学生は(2013年から14年にかけて倍に)、日本での就職率も増加傾向にある。

そして、職種別での就職先は、22.6%が製造業、23.4%が商業、9.1%がコンピュータ関連、8.9%が教育分野、4.8%が飲食業、3.7%が電機、そして3.5%機械関連である。企業規模でみると、製造業では従業員1,000人以上の会社に970人が採用されているが、中小企業と契約した留学生も多い。電機・機械業界等への就職は大手が多いが、飲食、コンピュータ関連、土木・建設、旅行業、飲食業では従業員50人以下ないしは100人以下の会社に就職するケースが目立っている。

職務内容をみると、23.8%が翻訳・通訳、23.6%が販売・営業、8.1%が情報処理、7.3%が教育、5.2%が海外業務、4.7%が技術開発になっている。報酬別では、月収20万円以下が33.7%、25万円未満が47.4%、30万未満が9.7%、35万円未満が3.3%で、全体からみてもそう高くないし人手不足が深刻な業種でもかなり低い月収である(需給の原理があまりうまく機能していないという指摘もある)。ビザの変更が許可された11,000人のうち、大卒が41.2%で、修士が3,165人、博士が867人であり、大学院卒が34.6%を占める10。また、専門学校卒後のビザ変更許可の割合は20.5%で近年増えている。就職先の企業等の所在地別では、46%が東京、9.3%が大阪、6.5%が神奈川、5.3%が愛知、3.8%が埼玉であるが、70%以上が関東に集中している。

最終学歴がかなり高いにも関わらず賃金がそう高くない理由として、企業は留学生の不十分な日本語能力、日本の労働環境や処遇体系への不理解などをあげており、即戦力にならない、チームワークの構築が困難といった、文化や価値感の違いからくる課題を指摘している。しかし、留学生にはあって日本人学生にはない要素を活用しきれない企業が多いのも問題である。国内外の外国人人材をうまくマネージメントできない日本企業の能力不足は少なくとも30年前から多くの専門家が指摘しており、その状況は今でもあまり改善されていないといえる。

当然、そうした課題を克服し成功している事例もあるのだが、その多くは規模の大小を問わず現地化している企業で、権限の委譲、処遇と昇進制度の拡充または本社職員の諸条件と均等化、利益配当への参加(株券の取得等)、役員への登用等を、積極的に展開している会社である。こうした会社は、日本か現地採用か、大卒か中途採用か、国籍も問わず、その外国人の能力とそれまでの経験をフルに活用して育成しながら共に成長し、失敗の教訓も共有するというスタンスをとっている。日本企業は未だに新卒採用を重視しているが、グローバル企業としてアグレッシブに事業を展開したいのであれば、ローカル職員も含めて様々な人事を適切に運営する能力を身につけなければならない。

留学生の受け入れの多い大学。(平成26年度 外国人留学生在籍状況調査結果、12頁、JASSO日本学生支援機構)

近年、来日留学生が増えている。誰もが高度なグローバル人材になるわけではないが、彼らの特徴や文化的差異を発揮できる労働環境の構築が、グローバル人材育成への第一歩となる。実際、外国人観光客が増える中、商業や旅行業、サービス部門全般にわたって、もっと柔軟かつ実用的な対応が求められている。これらの分野での留学生の雇用は今後増えていくかもしれない。

他方、海外展開する企業は何もこの日本だけではなく、世界中どこでも様々なスキルや国籍、人種の人材を調達するという発想に変わらなければならない。現在、世界には400万人近い留学生がどこかで勉強しているが11、その内73万人が米国、41万人がイギリス、35万人がオーストラリア、26万人がフランス、23万人が中国、そして18万人が日本である。この増加傾向に反して日本人学生の海外留学は減少する一方で現在6万人前後で、アメリカに留学している学生は2万人を切っている12

グローバル人材については、これまで執筆した原稿にゆだねるが13日本の企業や行政、研究機関や大学が実際どれだけ真剣に外国人留学生を求めているのか、これまでの諸状況を見る限り、留学生には伝わっていない。20数年前の「国際化」現象と同様に一種の流行的なことかもしれないが、少なくとも今後は多くの業種と職種で、異なった考え方を持ち、世界と渡り合える人材が必要になってくるということは確実である。留学という経験は、多くのことを学ぶ機会を与えてくれるだけでなく、留学生自身にとっても大きな試練でもあり、自分の国や社会を外から見つめ直す最大のチャンスである。元留学生である筆者も、この日本でそれまでの視点や価値観を根本的に検証してきたが、それが成長の源になっている。

注釈:

1. 2004年、中国国籍が全体の66.3%で77,713人であり、ベトナム人は1,570人(1.3%)だった。しかし、2014年には、ベトナム人学生が26,439人に増え(大学・大学院に11,174名で、日本語学校に15,265人)、全体の14.4%を占め二番目の留学生集団となった。 

2004年の留学生在籍状況について
-「日系人の日本への留学・研修、その意義と将来設計への活用」(ディスカバー・ニッケイ、2008年2月掲載)

2. 日本語教育機関とは、法務省が認定している民間の日本語学校で大学に入学するためや短期留学で日本語を勉強する語学学校である。 

- 日本人の海外留学状況   

近年、日本文化やクールジャパンへの関心で、短期留学が増えており、その半分をアジアからの学生が占め、10.3%が米国、4.2%がフランス、3.9%がドイツ、2.4%がイギリスからである。大学入学希望者は入試のために必死で勉強する。学部では私立大学に入学するケースが高く(81%)、大学院進学では国公立(65%)の在籍率が高くなる。

3. 卒業前に内定が得られない場合、就職活動の継続という意味で入管に申請すれば「特定活動ビザ」が得られ、週28時間以内の就労活動も含めて仕事を探すことができる。期間は6ヶ月間だが、大学側の推薦等も再度出してもらいそれなりの根拠があれば半年間延長することができるので最大1年間外国人留学生も卒業後就職活動ができる(以前は、卒業とともに一度は帰国しなければならなかった)。

4. JASSO日本学生支援機構 
Japan Careerという就職支援サイト 
NPO法人国際留学生協会IFSA 
留学生就職支援団体 NPA 
JAPAN STUDY SUPPORT (公財)アジア学生文化協会とベネッセの共同運営

5. 以前から日本財団の日系奨学生は、在日日系人子弟に対するオリエンテーションや高等教育の重要性をレクチャーしてきた。アルゼンチン人留学生のCEGAJAやペルー人のAPEJAも積極的に、毎回そうした就職オリエンテーション会合には、他のプログラムで来日している留学生や在日の子弟にも呼びかけている。こうした交流は互いに良い刺激を与えあうだけではなく、異なった状況と環境の違いが自覚を高めるという効果もある。

6. 2014年11月22日、WORKS JAPANという就職支援企業の会議室で開催し、その担当者や外資職員の体験談等が紹介された。ペルー人留学生が企画したものだが、複数の在日ペルー人が親子で出席していた。

7. 株式会社デェイスコ「外国人社員の採用に関する企業調査(2013年)

厚生労働省、労働市場分析レポート第28号、平成26年2月「外国人留学生の採用意欲調査の結果について」

CLAIR-自治体国際化協会「日本で学ぶ外国人“留学生”」2012年

8. 厚労省、「高度外国人人材活用のための実践マニュアル

9. 法務省入国管理局「平成25年における留学生の日本企業等への就職状況について

10. JASSO日本学生支援機構の「平成26年度外国人留学生在籍状況調査等について」によると、18万人の留学生のうち大学院生が約4万人で、その66%が国公立大学、34%が私立大に在籍している。学部では81%が私立大で、19%が国公立である。専門学校在籍の約3万人と日本語教育機関にいる約45,000人はすべて私立の学校である。

11. 1990年には130万人で日本には4.1万人の留学生だったが、2000年には210万人になり日本には6.4万人、そして2014年には約400万人で日本には18万人である。

12. 6万人のうち、21,126人が中国、19,568がアメリカ、3,633がイギリス、3.097が台湾、1,955がドイツ、1,855がオーストラリアである。(2012年の統計を集計) 

13. 「日本のグローバル人材とは?」パート1パート2 (ディスカバー・ニッケイ、2013年12月、2014年2月掲載)

 

© 2015 Alberto J. Matsumoto

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About this series

Lic. Alberto Matsumoto examines the many different aspects of the Nikkei in Japan, from migration politics regarding the labor market for immigrants to acculturation with Japanese language and customs by way of primary and higher education.  He analyzes the internal experiences of Latino Nikkei in their country of origin, including their identity and personal, cultural, and social coexistence in the changing context of globalization.