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米で指圧師歴29年のベテラン、目時強さん-数々のミラクル施術も 「良くなった」と言われるのが嬉しい-

アメリカに来て、一般のアメリカ人に普及していることに驚いたもの…スシ、カラオケ、クロサワ、ハローキティ…。そしてもう一つ、シアツだ。リトル東京で「E-Z 指圧&マッサージ」を経営する目時強(めとき・つよし)さんは、1981年からアメリカで指圧師として働き始めた。まだほとんどのアメリカ人が、ツボを押される心地良さを知らなかった頃だ。

アメリカで働き始めた頃は、お客さんはアメリカ人が大半だった。「お客さんには嫌がられました。私が強く押すから嫌だって言うんです。そういうお客さんばっかりだったですね。こちらでは指圧が使えないと分かりました」

目時さんは、日本で指圧師の学校に通いながら、治療院でインターンとして働いていた頃、お客さんの一人で、不動産業を営む社長がアメリカの温泉に投資していることを知った。そこに日本人の指圧師を連れて行きたいというのである。もともとアメリカが好きで、移住するのにビザが取りやすいとの話を聞きつけ、指圧を勉強していた目時さんには“渡りに舟”の話。すぐに飛びついた。

80年代初頭と言えば、まだ日本が右肩上がりの好景気の時代、目時さんは、くだんの社長が投資していたシティ・オブ・ブレア(オレンジ郡)のラビダ温泉で働き始めた。日本で指圧を受けに来るお客さんは、たいてい肩のこりや腰痛など体の不具合を訴えるが、ラビダ温泉では全く違った。

「そこはスウェディッシュ・マッサージの店でした。リラックスするためのマッサージですね。温泉に入った後、お客さんは(マッサージ用)ベッドの上に裸で横になってるから、体中に油を塗って、さすればいいんです」

いわゆるアロマセラピーも、このスウェディッシュ・マッサージの一種。癒し効果に期待できる。もちろん、スウェディッシュ・マッサージの経験などない目時さん、店が終わるとスウェディッシュ・マッサージの学校に通った。

「私は嫌でね、こんなのやりに来たんじゃないと。お客さんが寝たと思ったら、体を押してました。自分としては日本から指圧のために来たんだから、指圧をどんどん経験したかったですね」

当時から、ダウニーに今のジャパン指圧センター、ガーデナにジャパン・ヘルス・スパ、そして、そしてサンワ・ヘルス・スパなど、日本人の経営する指圧マッサージも数軒店を開いていた。けれどまだまだツボを押す指圧は、アメリカ人には敬遠されていたのである。

ラビダ温泉から日系のタワスパ(リトル東京)へ職場を変え、指圧マッサージ師として目時さんが多忙な毎日を過ごしていたころ、ある大事件が起き、マッサージ界は大打撃を受けた。1985年、米俳優ロック・ハドソンのエイズ死である。

「ロック・ハドソンが死んで、エイズが有名になった。それからマッサージは閑古鳥ですよ、エイズがうつるって」

マッサージは風呂(スパ)に入ってから受けるもの。エイズ患者と同じ風呂に入るとエイズがうつると、ウワサになったのだ。もちろんデマである。今ではエイズは性行為、血液を介して感染することが知られている。

「エイズがどういう状況でうつるかという情報が、丸っきりいい加減だったんです。我々の業界は本当大変でしたね。その頃スパに来るのは日本人だけでした」

やがてエイズへの誤解もとけ、徐々に客足が戻り始めた頃、80年代半ばから90年までの日本の円高ブームが起きた。今では考えられないが、リトル東京にも日本人観光客がワンサとやって来たのである。

「日本から、どっと観光客やらビジネスマンがロスに押し寄せてきた。お風呂だ、マッサージだってブームになりました。日本人はアメリカ人のマッサージは受けませんからね。あの頃が一番だったと思います」

タワスパを辞めた後、一時は派遣専門の指圧マッサージ師として生計を立てていたが、現在は、仲間とリトル東京で「E-Z 指圧&マッサージ」を開いている。80年代からリトル東京で指圧の普及に貢献してきた目時さん、ぜひリトル東京で店を開いてほしいとのお客さんからのリクエストに応えたのだ。そこには、リトル東京でも日本人以外(中国系、韓国系)の指圧マッサージ師が大半になったという背景がある。
   
「今が一番キツイ」(目時さん)という不況の中、クーポンを配ったり、シニア割引をしたり、苦心しながら日系社会での長い付き合いでお客さんを集めている。最近はリトル東京に近い市庁舎などからアメリカ人公務員たちも目時さんの指圧を受けにやってくる。

「みなさんがやってもらいたいポイントは、だいたい決まってます。肩、首、腰、この順でしょうね。(どの箇所を押すのかは)凝ってくると硬くなりますから分かります。お客さんには、血行が悪くなっている状態を“凝っていると”説明しているんです。コンピュータの前に座っている状態が長く続くと、無理が来て血行障害で硬くなるんでしょう」

目時さんいわく、その血行障害が眠れない(眠りの浅い)状態を生み出すことがある。指圧マッサージで、ある程度解消すると眠れるようになるという。「眠れるようになると、今度は体のコンディションもよくなる。だから眠れなくなるというのは、体が凝ってきているというシグナルじゃないですかね」

目時さんの起こしたミラクルな治療のひとつに、転んででん部を強打し歩けなくなったリトル東京に住む80代の男性の例がある。カイロや針、さまざまな治療を試みたが一向に良くならないという。最後の頼みの綱が目時さんの指圧マッサージだった。

「うちに来て、『治りますか』と言われたので、『治る』と言いました。歳だから普通の人みたいに強くは押せなかったけれど、普通の腰の悪い人と同じ治療をしました。不快にならないような押し方に気をつけました。週に一回来て一ヵ月後には立てるようになりましたよ」。今では一人で歩行器を使い、目時さんの店にやって来るという。

かくいう私も目時さんのミラクル治療の経験者だ。数年前、私は運動で股関節を痛め、足を引きずり、目時さんの指圧マッサージを受けに行ったことがある。「来て良かったね。年取ったら、歩けなくなるところだった」と言われ、1時間じっくり施術してもらうと、あら不思議、すたすた歩けるようになった。あのままだと体中がゆがんでしまいそうだったから、本当に行って良かったと思っている。

「やっぱりお客さんに楽になったと言われるのがいいですよね。行くたびに楽になると言われるのは嬉しい。そういうのが楽しくてやってるんじゃないですかね」(目時さん)


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E-Z Shiatsu & Massage

400 East 2nd Street, #205
Los Angeles, CA  90012
(Honda Plaza Mall内)
(213) 680-4970‎

 

© 2010 Yumiko Hashimoto

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About the Author

Born in Kobe city of the Hyogo prefecture, she has lived in Los Angeles since 1997. Works as an editor for a Nikkei Community paper, and also writes articles based on local happenings. When she was in Japan, she had never even heard of the word “Nikkei-jin,” let alone the existence of internment camps during World War II. She is participating in the Discover Nikkei site in hopes that the readers can “keep the existence of Nikkei people close to their hearts and minds.”

Updated October 2008

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