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The Nikkei of Latin America and Latino Nikkei

第49回海外日系人大会と日本の日系人大学生

海外日系人大会が国内の「日系人」にも注目

第49回目の海外日系人大会も無事終了し、海外からは132人、国内からも含めると、総勢で約300人が参加した。例年通り、初日には式典と全体会 議が行われ、開会式には秋篠宮御夫妻両殿下がご臨席された。海外から久しぶりに、または初めて里帰りをしていた日本人移住者にとっては大きな喜びであり、 その感動はすばらしい思い出になったといえる。

2日目はもっと具体的な内容で各国の日系団体が発表したり、要望を述べたり、問題提起をしたりする「代表者 会議」であるが、10年前ぐらいからは在日日系就労者についても取り上げており、ブラジルの二宮正人教授をはじめ、筆者も微力ながら、このテーマについて 発表してきた。近年は厚生労働省外国人雇用対策課の人の基調講演も導入され、日本国内の「日系人または日系就労者」というのが注目されている。そして 2006年からはこのセッションと平行して日本に留学している日系人の「ユース会議」というものが開催されるようになった

代表者会議で日系人のプレゼンテーションをする筆者 (写真:筆者提供)

日系就労者というのは海外に移住した日本人の子孫の一部である。1990年の入管法改正を機に主に中南米諸国から出稼ぎに来るようになり、日本への 逆移民という現象でもある。今では日本の各地でブラジル人コミュニティ、ペルー人コミュニティというものを形成している。入管法上、日系人ということで、 いかなる仕事にも従事できる在留資格を得ているが、実際は日本人から敬遠されがちである自動車産業や食品加工産業等の3K労働についているのが大多数であ る。金融危機前までは人手不足状態だった業界でありながらも、雇用も不安定で、多くが間接雇用であったが、今のような不況になると一番先に雇用調整の対象 になる労働市場にいる。しかし、こうした出稼ぎ者も定着しつつあり、集住している地域ではコミュニティもつくり、定住の意思を固めている人も多い(今後ど の程度残るか、本国に帰るかは不明である)。この中からも、まだ少ないが、子弟が日本の公教育をきちんと受けて大学に進学するようなケースも見られるよう になったのだ。

日本で生活し、教育を受けた「日系人」の声

今回の大会ではユース会議の報告をペルーの日系三世トレイシー・チャベスさんが行い、その他二人のプラジルの日系三世、島野パトリシアさんと柳瀬フ ラビア知恵美さんが自身の日本での教育と生活体験を発表した。二人とも小学校4年頃に両親と共に来日したが、イジメやクラスメイトの不理解にあいながらも 日本の学校で教育を受け、様々な困難を乗り越えながら高校にも進学し、無事卒業できたのだ(明確な統計はないが、南米系外国人の高卒率は一部の自治体のヒ ヤリングによると一割にも満たないようである)。この二人に共通しているのが英語のスピーチコンテストで優勝し、それによって自信を回復し、周囲にも認め てもらうことができたことである。その結果、フラビアさんは、大学進学を果たした。現在は国際基督教大学の学生として、将来は国連で働き、大学の教員にな りたいという夢を語った。大学費用は、今も工場で働きながら得ている収入と教育ローンによって補っている。一方、パトリシアさんは日本で母親を病気で失い ながらも、これまで人一倍頑張ってこられ、今年の4月からは名古屋国際センター多文化共生嘱託職員として地元日系人児童の支援事業に関わっている。少しで も多くの外国人子弟やその保護者が日本の教育制度を理解し、教育現場でのコミュニケーションをスムーズにするために日々尽力している。最近は様々なシンポ ジウムで自分の体験を発表しているが、多くの同胞も勇気づけられているだけではなく、今の日本の大学生にも見習ってもらいたい良い手本である

こうした生の声が海外日系人大会で聞けるようになったことは、この大会も今年のブラジル日本人移民100周年を機に、少しずつ(日本)国内の日系人 に焦点を当てているからではないかと感じられる。参加者の中からは、来年の第50回の大会には「在日日系人大会」のようなものを同時に開催しては、という 提案もあった。

日系人留学生のユース会議のメンバーと日本で教育を受けている日系就労者の子弟が連携して新たなネットワークを構築できれば、前者はもっと日本を中 から知ることができ、後者は日本の様々な分野において前者の出身国にもっと情報発信することができるに違いない。前者と後者は育った環境と受けた教育環境 が異なるが、出身国は同じであるという共通性もあるのだ。後者の中には日本国籍を取得するものも出てくるが、親の祖国はブラジルであり、ペルーであり、 切っても切れない絆が存在するのである。

柳瀬フラビア(国際基督教大学大学生)と島野パトリシア(名古屋国際センター多文化共生嘱託職員) 二人ともブラジル日系三世で、就労目的で来日したブラジル日系二世の子弟である。 (写真:筆者提供)

日本社会が活用できる人材

世界はグローバル化しており、人の移動も以前より容易になった。何らかのプログラムを通じて留学するものもいるが、日本で就労することを機に、そう した世帯の子弟は小学校から大学まで日本の教育機関で勉強するようになる。不就学問題等の懸案事項や高校進学率・高卒率がまだ非常に低いという課題もある が、確実に大学や大学院に進学するものも増えてくるに違いない。

外国人留学生のほとんどはアジア諸国からで、中南米からの留学生は1%にも満たない。奨学金を受給している者も全体の一割程度でほとんどが私費留学生である。日系人の場合はほぼ100%が何らかの奨学金を受けているが 、 就労者子弟のほとんどは、自力で親の貯蓄やローンと自分のアルバイト等で高等教育を目指している。私費留学生らと同じ土台で競争しているトレイシーやフラ ビアはいずれとてつもない力を発揮するに違いないと期待したい。この社会の中から良い部分とあまり良くない部分を体験し、理解している。短所も長所も知 り、日本社会が求めている人材、いずれ必要になるであろうという人材のパフォーマンスも真剣に考えており、限られた選択を広げながらこの社会で活用できる 人材になることを目指している。パトリシアのように自分の経験をベースに多文化共生事業に役立てているすばらしい手本もある。そして、中には親の祖国(ブ ラジルやペルー等)との繋がりや絆を再発見しながら、自身の多様性を活用して国際舞台で羽ばたくものも出てくるに違いない

気になることが一つあるとすれば日本がそうした人材の大切さ、活用の仕方を心得えているかである。未だに不透明な基準で留学生を採用する企業は多 く、昇進も処遇もあまりにも粗末であるケースが多い。それでも日本の魅力を理解している外国人留学生はすごいハングリ精神で様々な体験をしながら日本でも 世界でも評価されるように頑張っている。 厳しい時代を迎える南米からくる日系留学生と日本で教育を受けている就労者子弟だが、この複雑で多様な要素があ る世界でどのように自分たちの異なった価値を高め、売り込み、活用するかである。

今回の日系人大会は、そうした二つの「日系人」を引き合わせてくれた気がする。

大会に参加した留学生たち、「ユース会議」のメンバーの一部。 (写真:筆者提供)

注釈:
1. http://www.nikkeiportal.com/youthkaigi/
このサイトにはこれまで行われた3回の会議の様子や結論が掲載されている。今年の発表は現在関西大学経済学部に所属している日系ペルー人のトレイシー・チャベスさんが流暢な日本語で行った。今年から日本財団の奨学生になり、既に大学院への進学を決めている。

2. 名古屋国際センターのサイト 島野パトリシアさんが関わっている諸事業 
http://www.nic-nagoya.or.jp/japanese/tabunka_kyosei/index.htm
二人の発表内容は、(財)海外日系人協会「第49回海外日系人大会報告書、51~53頁に掲載、2008年11月。

3. アルベルト松本「日系人の日本への留学・研修」、ディスカバー・ニッケイのコラム、2008年6月。 
http://www.discovernikkei.org/journal/article/2519/

4. アルベルト松本「国際的な人材育成を目指すための日系人たちの日本留学を考える」日系人ニュース第93号「地球儀」コラム、2008年3月。
http://www.jadesas.or.jp/publication/03news093.html#chikyugi

© 2009 Alberto J. Matsumoto

About this series

Lic. Alberto Matsumoto examines the many different aspects of the Nikkei in Japan, from migration politics regarding the labor market for immigrants to acculturation with Japanese language and customs by way of primary and higher education.  He analyzes the internal experiences of Latino Nikkei in their country of origin, including their identity and personal, cultural, and social coexistence in the changing context of globalization.