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次の世代へ:30歳未満のニッケイヒーロー

グラジエラ・タマナハ ~ブラジル日系コミュニティの若手リーダー~ ーその2

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文協の日本文化祭り

「2019年には『文化祭り」のコミュニケーションチームの一員として、『名探偵ピカチュウ』という映画の宣伝をしました。今までこれほど大きなインパクトのあるチームに参加したことがなかったので、私にとって大きな挑戦でした」と、グラジエラは語る。

文化祭りでのコミュニケーション&マーケティング部に参加したグラジエラ、2019年(グラジエラ・タマナハ提供)

長年同じやり方で引き継がれてきた「文化祭り」は、2018年に日本のポップカルチャーを取り入れることになった。グラジエラはこのような変化を取り入れることに不安を覚えたという。

「時が流れ、過去10年間継承してきたこのイベントは、新しい要素を入れることになりました。例えば、『芸能祭』は伝統的な踊りを披露するイベントとして残しましたが、その他は現代風にアレンジする必要が出てきました。というのも、常に観客は新しい物を求めるようになっているからです。何か新しいことを加えていかなければ、時代遅れになるでしょう」と、国際フォークダンス委員会の副会長でもあるグラジエラは話してくれた。

2019年、グラジエラは青年会理事会のコミュニケーション&マーケティング部へ参加しないかと誘われた。「そして、私は『REVI』と言う、協会の若いリーダーの全国フォーラムのコーディネーターになりました」。

「青年会」コミュニケーション&マーケティング理事会に任命されたグラジエラ、2019年(グラジエラ・タマナハ提供)


REVI

若者の集まりであるREVI(Revitalização・活性化)は、2001年から、若いリーダーのフォーラムに変更になった。今では文協青年委員会のメインイベントとなっており、全国20か所にある青年会と組織委員会を含めると、100人以上のメンバーで構成されている。

例年、サンパウロ州サン・ロッケにある国士館文協公園(元国士館大学スポーツセンター)で開催されてきたが、2019年は、パビリオン・カズオ・ハラザワが建設中だったため、サンパウロ州アルジャーにあるニッポン・カントリークラブで開催された。パンデミックのため中止されていた建設は、今年再開された。

「REVI」若きリーダーのフォーラムに出席した日系コミュニティの著名人とコーディネーターのグラジエラ、2019年(ヨナミネ/Mundo OK提供)

「初めて組織の代表として参加させてもらい、とても緊張しましたが、若い世代として、コミュニティの著名人とご一緒できたことは、とても良い経験でした」

オープニングの出席者は、以下のとおりです。2018年文協の理事会長リディアネ・ヨシエ・アオキ、文協青年委員会理事会長ギリェルメ・セイゴ・マツモト、ニッポン・カントリークラブ会長ヴァルテル・ササキ、当時サンパウロ総領事館野口野康氏、文協元副理事会長でクニト・ミヤザカ財団会長ロベルト・ニシオ、現青年会会長ロドルフォ・ワダ。

この時選ばれたテーマは、「あなたの居場所はどこですか?」だった。

「例えば、グループに入っていても、なじめなかったら、同じ力を発揮することはできません。ですから、私たちは『REVI』の目標を、居場所について考えることにしました。グループでの居場所が見つかれば、快く受け入れられ、自分らしく居られますから」とグラジエラは言う。

「REVI」コーディネータを務めたグラジエラ。ニッポン・カントリークラブにて、2019年(グラジエラ・タマナハ提供)

「イベントのマスコットキャラクターは『おにぎり』に決まりました。こぼれたご飯粒を集めれば、食べ物になるでしょう?私たちも、最初は、一個のおにぎりが山の上に立っているようでしたが、たくさんのおにぎりが集まってくると、一つの物に纏まります」。このキャンペーンはクリエイティブだったので、今では「REVI」と「おにぎり」はつながっているようだ。「観客には良い思い出になったと思います」

以来、2020年からはオンライン形式でイベントを開催するようになった。どのようにして皆さんの注目を集めるかが課題だったが、「REVirtual」はバーチャル「REVI」として大成功だった。

二回目の「REVirtual」は「Boost」、「リガ・セイネン」と言う日系協会のための独立したグループ、サントス日本人会、ゴイアス日系人会青年会(ANBG)、ゴイアニアの青年会(とても活発な若者団体)とのパートナーシップで行われた。

「協会の継承に重要な若者の参加」についてのチャットには文協とリオ・グランデ・ド・スールの青年会『ワカイ』が参加した。「他のグループも、ディスカッションして、意見や経験の交換ができるようになったらいいなと思います」。

「北東部や北部、中西部などの遠い場所に居ても、オンラインで繋がることができます」。「パンデミックのさなかの状況や困難にもかかわらず、私たちはたくさん学ぶことができました」

二度目の「REVI」のライブにはブラジルの各州から若者が集まった。2021年(グラジエラ・タマナハ提供)


桜祭り

2021年の桜祭りは文協国士館公園で行われた。パンデミックの影響で、観客は事前予約が必要で、車に乗ったまま桜を観察しなければならず、写真の撮影が許可されていた2か所と予約したお弁当を受け取るときだけ、車から降りれるルールになっていた。これは、若者の提案で、文協の理事会に承認された。

短い時間だったが、外出して、自然の中で過ごせることを観客は楽しんだようだった。「野外に居る方が皆さんは、安心するようなので、最近のイベントは国士館公園で行われています」

パンデミックのため、2021年の桜祭りはドライブスルーの形式で行った。(グラジエラ・タマナハ提供)

文協国士館公園の管理委員会会長のセルソ・ミズモトは、若者のミーティングに定期的に参加し、彼らの活動を応援・見守っている。

「現在の青年委員会はイベントの運営と開催だけではなく、計画と戦略も任されています。全ての努力が報われたのです。セルソ・ミズモト会長の信頼を得たからこそです」とグラジエラは力説する。

2020年に「青年文協」の副理事長に任命されたグラジエラは、今年コミュニティで大きな一歩を踏み出すことになった。「今年は理事会長に選ばれたので、2月から3月にかけて引き継ぎができるよう心積りをしています」と明かす。
 

若者の貢献

パンデミックの間に、文協の活動はデジタル化された。それには、若者たちが大きく関わった。最初のライブは「おうちで文化祭り」だった。「今まで誰もこのような企画をしたことがなかったので、このイベントを計画して、とても勉強になりました」。

2021年の文化祭りライブを披露するのはグラジエラにとって大きなチャレンジだったが、初めての新鮮な経験となった。(写真:YouTube Bunkyo Digitalより複製)

デジタル化は、さほど複雑ではないとわかり、文協の理事会はデジタルの導入を加速させた。しかし、シニアの経験と若者のノウハウを生かすプロセスには忍耐が必要だった。

「Movimento Água no Feijão 」はレストラン「アイゾメ」のシェフであるテルマ・シライシの社会貢献プロジェクトである。幾つかの協会のボランティアたちの協力で実現した。参加したのはJCI-Japão(ブラジル日本青年会議所)、 Asebex (日本留学研修OB会)、 Abeuni(サンパウロの大学生ボランティア団体)、Abjica(JICA研修生OB会)、 Aliança Cultural Brasil-Japão(ACBJ 日伯文化連盟―アリアンサ)、Comissão de Jovens do Bunkyo(文協青年委員会)、 KIF Brazil( キフブラジル・映画『ラストサムライ』の俳優小山田真が設立した国際キフ機構)で、 社会貢献プロジェクトとして、コミュニティの多くのグループが参加したイベントだった。

  パンデミックによって悪化した貧困問題の撲滅をめざす「Movimento Água no Feijão」活動、2020年(グラジエラ・タマナハ提供)

このプロジェクトでは、まず協力してくれるスーパーマーケットから食材を提供してもらい、食材をお弁当を作る場所まで運ぶ。そしてできたお弁当をサンパウロ市にある「Sociedade Imperador do Ipiranga」というサンバ・学校の中庭で配布した。2020年には6万3千食のお弁当を配った。

「私はプロジェクトの最終日に行き、その日は日常生活のための必需品のセットも配りました。また、エリオッポリスというサンパウロ最大のスラムにも行きました」。グラジエラはこのプロジェクトの規模と皆の人々を助けようという気持ちに驚かされ、貴重な体験だったと言う。

文協の青年会とブラガンサ・パウリスタの青年会の様子。2021年の忘年会にて(グラジエラ・タマナハ提供)


ニッケイアイデンティティ

日系三世のグラジエラは、日系コミュニティで活動しているため、二世と思われることがあるという。しかし、彼女自らは、ニッケイだと言う。

「ニッケイはコミュニティのイベントを宣伝したり、自分が出来る手伝いをしたり、グループに参加したりして、貢献します。日系人でも非日系人でもかまわない。非日系人でも、日本文化に興味を持ち、好きであるならば、日系人よりも、貢献できると思います」

「社会のために役立ってくれる人を、差別などできません。日系人でも非日系人でも、皆、助け合っていますから」。
 

未来のヴィジョン

「私たちの歴史の一部でもあるので、伝統を守ることは大事です。物事の由来を知り、今の時代をバランスよく生きることが必要だと思います」。

「今私たちは、未来のために活動を行っています。実際、大人と若者の間に世代的なギャップがあり、これまでは私たちは参加する気になれませんでした。古い世代と若い世代が別々に活動を行っていました。しかし、今のうちに行動しなければ、私たちの文化や歴史を受け継ぐ人がいない、失われてしまうでしょう」

それが、青年会の役割だという。「私たちのグループが、古い世代だけではなく、社会全体に、より貢献できるよう願っています」。

経験を積み重ねながら、グラジエラの学びはこれからも続く。

「この活動を止めることはもったいないです。どのような方法でも続けるべきです。私は、自分のルーツを大事にして、沖縄と北海道の県人会と連携し、今までの経験を生かして、貢献していきたいのです。活動を続けることで、次の世代に継承してければいいと思います」。

 

© 2022 Tatiana Maebuchi

このシリーズについて

このシリーズでは、世界各地で暮らしている30歳未満の若い世代の日系人から話を聞きました。ニッケイ・コミュニティの将来をより発展させるために活動する若者たち、また斬新でクリエイティブな活動を通じてニッケイの歴史や文化、アイデンティティを共有し、探求している若者たちです。

ロゴデザイン: アリソン・スキルブレッド